平倉社会保険労務士事務所
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雇用・労災の過少給付 不足分が支給される人は?

ilm08_ab08006従業員の賃金等を調査する、毎月勤労統計調査で不適切な調査があった問題。発表された統計上の賃金は実際より低かったので、失業給付や労災保険の給付で給付額が少なくなった人がいるとされています。
統計の数値が変われば、なぜ給付額が変わるのでしょうか?

〇毎月勤労統計と給付額の関係
例えば、失業した時にもらえる失業給付(雇用保険の基本手当)、1日当たりにもらえる金額は、原則として、退職前6か月の賃金で決まります。
しかし、これには上限額と下限額が定められています。現在(2018年8月1日から1年間適用)の金額は以下のようになっています。

・上限額
30歳未満または65歳以上 6750円
30歳以上45歳未満    7495円
45歳以上60歳未満    8250円
60歳以上65歳未満    7083円
・下限額
全年齢共通      1984円
退職前にいくら賃金が高くても、この上限額でストップ。賃金が低かった人でも、下限額は保障されます。
この上限額と下限額はどうやって決めているのかというと、前年度(4月から3月)までの毎月勤労統計調査で示された賃金をもとに、当年の8月1日から改定されることになっています。毎年8月1日に改定されているのです。
もし、毎月勤労統計調査の金額が間違えで、上限額が10円高かったとすれば、今までの上限額でストップになっていた人の金額があがるというわけです。下限額についても同様な事が言えます。

労災保険の休業や障害、遺族に関する給付にも年齢階層別に上限と下限が定められていて、この金額も毎月勤労統計調査で示された賃金により8月1日に改定されます。

このほかにも、雇用保険でいえば、以下の給付が、毎月勤労統計調査の結果に影響されています。
就業促進手当、高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付

〇不足分が支給されるのはどんな人?
厚生労働省は、不適切な調査が始まった2004年まで遡って不足分を払う方針です。ただ、上記のしくみを見れば、この期間中に失業給付を受けた人全てが対象になるわけでないことは明らかです。上限額で給付金が抑えられていた人や、下限額で保障されていた人になります。
もう1つ考えられるのは、上限額を上回ることを知って、申請を諦めた人 です。高年齢雇用継続給付で言えば、現在は、1か月の給与支給額が359,899円以上であれば、給付金はでません。出ないことがわかっていれば、申請しないかもしれません。申請しなければ記録には残っていません。

〇助成金や労災の保険料率は?
失業給付や労災給付などは労働者が受け取るものです。企業が受け取る助成金、あるいは支払う保険料については、毎月勤労統計の影響はあるのでしょうか。
例えば、雇用調整助成金の金額は影響があります。従業員を休業させ、その休業手当の金額の一部を助成する制度があるのですが、1人1日当たりの上限額は、上記失業給付の上限額(最大の8250円)と同じです。上限額が変われば、助成金全体の金額も変わってきます。
保険料に影響が出ることも考えられます。労災保険の保険料率は業種によって違いますが、払った保険料と受けた労災給付金額に応じて保険料率が上下する、メリット制というものがあります。メリット制は業種や労働者数によって、適用される企業と適用されない企業があります。
メリット制が適用される企業では、労災給付の上限額が改定され、結果的に労災給付総額が増えれば、保険料率が上がるということもありえます。

〇対象者には文書を送付
厚生労働省は、過少給付の対象者で住所が判明している人には、文書を送付するようです。助成金の場合は会社の所在地に送付されます。また専用の電話相談窓口を設け、1月12日から14日の3連休中も相談を受け付けます。
なお、厚生労働省や労働局から、本件で自宅等に直接電話がかかってくることはありません。電話がかかってきた場合は、ご注意ください。

雇用保険、労災保険等の追加給付について(厚生労働省)

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