平倉社会保険労務士事務所
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労働時間5分未満切り捨ては違法か?

ilm08_ad08003新聞報道によると、ある大手飲食チェーンで、これまで5分未満を切り捨てていた労働時間の計算を、1分単位に変更すると表明しました。それだけでなく、切り捨ていた分の賃金は過去2年に遡り支給するというのです。
同社の担当者は、以下のように言っています。
「5分単位の勤怠管理自体が違法である認識はない」
一方、厚生労働省の担当者は、以下のように話しています。
「労働基準法は労働時間分の賃金を支払わなければならないと定める。一律で5分未満を切り捨てた場合、労働基準法違反の可能性がある」

〇労働時間、賃金の算定方法
労働基準法では、働いた時間の分の賃金を全額支給しなくてはならないと規定しています。たとえ5分でも、その分の賃金を切り捨てることはできないのです。
労働時間の端数処理として認められているのは以下のケースです。
「1か月における時間外労働等の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に30分未満の端数を切り捨てそれ以上を1時間に切り上げる方法については、労働基準法違反として取り扱わない。」(昭和63.3.14基発第150号)
1か月の合計を四捨五入ならぬ「29捨30入」は違法ではないという事が書かれていていますが、その元となる1日の計算は、1分単位で計算する必要があります。

〇タイムカード=労働時間か?
始業が9時、終業が18時、休憩が途中1時間、所定労働時間が1日8時間である会社の例で考えています。
ある日のタイムカードの始業が8:56、終業が18:04と押されていて、途中休憩1時間取ったとします。休憩を除いた時間は8時間8分となります。8分の賃金を払わなくてはならないかというと検証が必要です。

この人の事業所はビルの1階にタイムカードがあり、実際に働くのは10階なのでエレベータで上がり、ロッカーに行き鞄をしまい、自らのデスクに座る。エレベーターの待ち時間が長ければ、4、5分かかるかもしれません。タイムカードを押してビルに入った時から会社の管理下におかれるような場合は別ですが、エレベータを待っている間やビル内を移動するときにスマートフォンを私的に見ることができるなどの自由が与えられていれば、自分のデスクに座るまでは労働時間と言えないでしょう。同じ人が次の日、始業が9:00、終業が18:00とタイムカードを押し、休憩を1時間取ったら、遅刻でも早退でもないでしょう。ただ、実労働時間8時間を確保することは、物理的に不可能でしょう。

〇「15分単位」は見直しを
上記のような5分未満であれば、しかたない面はあります。ただ、これが10分、15分となれば話は変わってきます。そもそも移動や準備にそんなに時間がかかるのかというのは疑問が残ります。「労働時間は15分単位で、15分未満は切り捨てる」と一律に処理しているのであれば、それは見直しが必要でしょう。

平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金 (hirakura.net)

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