平倉社会保険労務士事務所
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社会保険の適用拡大 壁は106万円ではない

2022-10-05-1令和4年10月1日より、社会保険の被保険者100人超の事業所(企業や団体等)では、今までの要件よりも短時間で勤務する人も社会保険に加入する義務が出てきました。いわゆる、社会保険の適用拡大です。

この中の収入に関する要件について、世間で「106万円の壁」という言われ方をしていますが、これは誤解を生む表現です。

〇従来の社会保険の加入要件
社会保険に加入する人の要件として
「その企業等てに雇用される通常の労働者(いわゆる正規社員)と比べて、1週間の所定労働時間が4分の3以上かつ、1か月の所定労働日数が4分の3以上の人」
というものがあります。正規社員でなくても、加入する人が出ます。
正規社員が週休2日で1日で1日8時間労働の企業であれば、1週間30時間以上、1か月16日か17日以上働く人は、社会保険に加入しなくてはなりません。

〇社会保険の適用拡大
上記の要件に加え、社会保険の被保険者100人超の事業所では、これより短時間の勤務でも社会保険に加入する人が出てきます。
ここで、「社会保険の被保険者が」となっているので、社会保険に加入していない人はカウントされません。ただ、従来の要件に該当しているのにまだ社会保険に加入していない人がいたら、まずその人を加入させましょう。そのうえで、被保険者の人数を数えましょう。

そうやって被保険者の人数を数えて100人を超えて事業所では、次の要件のすべてを全て満たす人も、社会保険に加入させなくてはなりません。

1 週の所定労働時間が20時間以上
2 月額賃金が88000円以上
3 2か月を超えて雇用される見込みがある
4 学生ではない

〇103万円の壁とは意味が違う
106万円の壁とは、月額88000円を年換算すればおよそ106万円になるから作られた言葉ではないかと思われます。しかし、社会保険の適用拡大の要件では、年収ではなく月額賃金です。

106万円の壁と似た言葉で、103万円の壁や150万円の壁という言葉があります。これらは税金の話です。1年間(1月から12月まで)の収入で判断されます。

例えば、給与収入しかない人で、年収103万円未満であれば、その人の所得税はかかりません。
また、年齢や続柄(配偶者の方は別の基準になっています)によっても違いますが、年収103万円以内の人を扶養している人は、税金上の扶養親族となり、税金が安くなります。
企業によっては、「家族手当を支給する対象家族は、所得税が非課税になっている人」という要件を付けているところもあります。
年収103万円を超えてしまうと、これらのメリットは受けられない場合が出てきます。だから103万円に壁があるという考え方は理解できます。

例えば、1月から11月までの給与収入が100万円となった人がいました。103万円を超えてしまうと上記のメリットが受けられないので、労働時間を調整して、12月の給与を3万円以内に収めたら、メリットは継続できます。
しかし同じ人が、「12月の給与を3万円以内に収めるのは無理。106万円の壁があるから、6万円以内に収めよう。これなら、社会保険に加入しなくてもよい。」と考えて、実際に6万円以内に収めても意味かありません。1月から11月までの給与収入が100万円ということは、平均で月額9万円を超えています。月によって金額のばらつきがあったとしても、どこかの月で88000円を超えているはずです。ほかの要件がせ満たしていれば、その時点で社会保険に加入していないといけません。

「1月から12月までの給与合計を106万円以内にしていれば社会保険に加入しなくてもよい。」というのは誤りです。社会保険の適用拡大の要件では、月額賃金で見ます。年収でありません。壁は106万円ではありません。

この内容は、Youtubeでも解説しています。

https://youtu.be/zcpr8t4b1KA

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