11月25日、東京都労働委員会が、ウーバーイーツを運営する会社などに対して、配達員の労働組合と団体交渉に応じるよう命じました。
東京都労働委員会が「配達員は労働組合上の労働者である」ことを認めた形になります。
この記事は、YouTube でも配信しています。
https://www.youtube.com/watch?v=c5JifmARSms
〇団体交渉を拒否
事の始まりは、ウーバーイーツの配達員たちが労働組合を結成し、事故時の補償など、待遇改善のため運営会社側に団体交渉を要求したことにあります。
しかし運営会社側は、
「配達員は個人事業主として契約している。労働者ではないから、集団になっても労働組合ではない。だから、団体交渉の必要はない。」
と主張し、団体交渉を拒否しました。
労働組合法では、労働組合と認められる団体から団体交渉を要求されたら、会社は、正当な理由なく拒むことができないと定められているのです。
そこで配達員の労働組合は、東京都労働委員会に、「運営会社が団体交渉に応じるように」と救済の申し立てをしました。
〇労働委員会とは
東京都労働委員会は東京都にある労働委員会です。労働委員会は、各都道府県に有ります。
労働委員会は、「労働組合の問題に関する裁判所」のようなところです。
今回のように、団体行使に応じない とか、 正当な労働組合の活動をしているのに解雇された とか、 労働組合の権利を侵害する行為(これを「不当労働行為」といいます。)があったときや、その疑いがある時に、それを正すよう救済の申し立てができます。
それを受けた労働委員会は、労働組合側の主張、そして会社側の主張も聞き、今回のように、「団体交渉をすること」と命令を出したり、あっせんといって、解決案を双方に提示することがあります。
そのようにして、労働組合の争いごとを解決するのが労働委員会の役割です。
〇労働者かどうか まだ入り口
東京都労働委員会が、「配達員は労働組合法上の労働者である」と間接的に認めていますが、これが確定したわけではありません。
会社側は、この決定に不服があれば、中央労働委員会という、国がやっている労働委員会に再審査請求をすることができます。それでも不服ならば、裁判で争う事ができまい。
仮に、「配達員は労働組合法上の労働者である」ことが確定し団体交渉が実施されたとしても、もう1つ大きな問題が残ります。
「労働組合法上の労働者」であることは認められましたが、「労働基準法の労働者」であるのかは、判断していません。この2つは、イコールではないのです。
日本のプロ野球選手会は労働組合です。東京都労働委員会がはっきり認めています。選手会に所属している選手は労働組合法上の労働者ということになります。
しかし、プロ野球の試合で延長戦になり、試合が22時以降になったからといって、深夜割増賃金はでません。プロ野球選手は「労働基準法の労働者ではない」というのが、現在の考え方です。
労働基準法の労働者であれば、仕事中のけがは労災が適用されます。最低賃金も適用になります。働く時間数にもよりますが、雇用保険に加入できたり、社会保険に加入出来たり、補償の道は広がります。
しかし、労働基準法の労働者であれば、使用者(会社)の指揮命令の元、働くことになります。今まで通り、好きな時間に好きな場所ではたらくということができなくなるかもしれません。
雇用契約書に、「労働時間は9時から18時 途中休憩1時間」と記載されていれば、9時から18時まで働いて賃金をもらう権利はありますが、9時から18時まで働く義務もあるのです。
働き方が多様化している現在、このような問題は、料理の配達員だけでなく、全てのギグワーカーに関係します。
どのような働き方をする人をどのように補償していくかが今の日本の大きな課題です。
平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金 (hirakura.net)
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