昨年からの物価上昇は、ここ10数年で経験したことのないレベルです。
特に、食料品や光熱費といった、生活に直結する物が上がっています。
こんな状況もあり、岸田総理大臣は、「物価上昇を超える賃上げを」と経済界に呼びかけています。
〇賃上げ=定期昇給+ベースアップ
賃上げとは、文字通り、賃金を上げる事です。日本では、1年に1回、4月に行う企業が多いです。
年功序列型の賃金は、勤続が1年(年齢が1歳)増えると、原則的に賃金が上がります。
これは、定期昇給と言われるものです。
大学を卒業して22歳で入社した人の、標準的なライフモデルを見てみましょう。
20代で結婚し、30代に第一子、第二子が生まれます。40代、50代とその子たちが、高校、大学へと進学します。
標準的なライフモデルになった場合、年齢とともに生活に必要なお金は増えていくのです。
年功序列型賃金では、このライフスタイルを定期昇給で維持しているという考えることもできます。
ただ、物価が上昇すれば、定期昇給だけで生活水準を維持することはできません。
物価が上がれば、30歳の人が生活に必要な金額は、昨年より今年の方が多くなるはずです。
そこで必要になってくるのがベースアップ(ベア)です。
これは、昨年の30歳の人の賃金より、今年の30歳の人の賃金を高くする(引き上げる)ことです。
もちろん、30歳の人だけでなく、各年齢の賃金も、昨年より引き上げます。
賃金全体を、底(ベース)から上げる。だからベースアップと言われています。
物価が上昇している局面では、定期昇給とベースアップが無いと、生活水準は維持できません。
よって、賃上げには定期昇給とベースアップが必要なのです。
〇令和の時代の賃上げ
「年功序列は昭和の遺物。令和の時代に何を言っているんだ!」という声が聞こえてきそうです。
確かに今は年力主義の賃金が主流です。賃金が下がることだってあります。
そして、定期昇給という概念が崩れてきていて、賃上げのどの部分が定期昇給でどの部分がベースアップか区別ができない事の方が多いです。
ただ、多くの企業が、「この職務能力の人は○○円」という、職務等級ごとの賃金テーブルを作成していると思います。
これを「賃金の価格表」とも言えます。
1年間頑張って仕事をし、職務能力も向上し、等級がアップして賃金も上がった。
しかし、賃上よりも物価の上昇の方が大きかったら、実質は減額されたようなものです。
このような事がないよう、賃金テーブルの全体を引き上げる必要があります。
等級がアップして賃金が上がる分が定期昇給、賃金テーブル全体を引き上げるのがベースアップにあたります。
〇物価上昇率を超える賃上げは可能か?
昨今の物価上昇に見合う賃上げ率について、「定期昇給とベースアップをあせた賃上げ率は5%が必要」という見方があります。
5%という賃上げ率は、労働組合の連合が掲げている目標とも一致します。
大企業の中には、既に5%を大きく超える賃上げを表明しているところもあります。
ただ、5%を超える賃上げができる企業は、まだごく一部でしょう。
まずは、業績が良い企業に大幅賃上げをしてもらい、消費が喚起され、景気も良くなり、多くの企業で大幅賃上げができるようになる。
このような循環が理想ですが、これには、4、5年かかるのではないでしょうか?
ただ、まずは、大幅賃上げができる企業が賃上げし、日本経済を牽引してもらいたいものです。
平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金 (hirakura.net)
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