平倉社会保険労務士事務所
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在宅勤務者は労働者だ

ilm08_ab07006先週とは違い、断定的なタイトルです。会社に所属し、従業員として勤務していれば、在宅勤務をしていれば労働者です。労働基準法をはじめ、労働諸法令の保護や労災などの補償もあります。

ただ、厚生労働省が民間企業に委託した調査によると、「在宅勤務での残業は認めない」という企業が23%もあったそうです。残業を認めないのであれば残業代は払われなくなりますが、労働者に対してそれは許されるのでしょうか?

〇残業は会社の命令が本筋

残業(時間外労働)は、労働契約で定めた労働時間を超えて労働することです。労働者は、本来残業をする義務はありませんが、36協定の締結などの法律の要件を満たせば、会社(使用者)が労働者に残業を命ずることができます。これで残業が成立するわけです。

多くの企業は、労働者からの残業申請を受け、これを承認することで残業命令としているようです。この申請を受け付けない、あるいは申請、承認の要件を厳しくすれば、実質的に「残業は認めない」ことになります。

会社が残業を命令していない、申請を認めていなくても、「残業」になる事はあります。在社の場合で、明らかに所定労働時間では終わらない仕事をさせ、残業しているのをわかっていて止めない場合は、「黙示の指示」が、あったこととなり、残業と認められるでしょう。

在宅勤務の場合、労働者が仕事をしている姿を見ることは難しいですが、仕事のメールや電話の記録から、この時間帯は仕事をしている事が明らかとなれば、命令や申請なしでも残業と認められる可能性はあります。

〇裁量労働制、事業場外みなし労働

在宅勤務者でも裁量労働制を適用することは可能です。法律の要件に該当する場合、残業は無しになる事もあります。

また、在宅勤務の場合は、会社の外ということもあり、営業社員などに適用される事業場外みなし労働が適用されることもあります。本年3月に発表されたテレワークガイドライン 000766329.pdf (mhlw.go.jp) によると、以下の①と②の両方の要件を満たせば、事業場外みなし労働の適用が可能となります。

① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととさ れていないこと

② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

事業場外みなし労働が適用されれば、原則として、所定労働時間の労働をしたとみなされ、残業は無くなります。労使協定で、「1日の労働時間は9時間」と定めれば、1時間は残業(所定労働時間が1日8時間の場合)となりますが、多くの企業は、所定労働時間になっています。

裁量労働制や事業場外のみなし労働が適用となれば、残業代は見込めない反面、仕事をする時間帯は原則自由です。中抜け休憩も自由にできます。

〇在宅勤務者は労働者でよいか?

ブログタイトルと少し変わった視点でも書きます。

上記のテレワークガイドラインの中に、人事評価制度の留意点も書かれているのですが、その中に次のような一文はあります。

「部下に求める内容や水準等をあらかじめ具体的に示しておく」

大切な事です。一部の専門職では、仕事の内容・成果を具体的に定めておくことは可能でしょう。それに応じた賃金設定、あるいは、賃金交渉も可能となります。

在宅で、労働時間も自由で、賃金交渉力も付けば、会社に所属しなくてもフリーランスでやっていけるのではないかという考えもあります。フリーランスになれば、他の会社の仕事も堂々とできます。

実際にフリーランスとして独立する人もいるでしょうが、踏み切れない人も多い理由が、先週のブログで書いた、フリーランスの保護の問題です。

さまざまな働き方の人が出てきて、労働法制に適用しずらくなっている感じです。

平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金 (hirakura.net)

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