平倉社会保険労務士事務所
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労働時間把握の重要性を感じた2つの記事

ilm08_ac080045月17日付日本経済新聞の朝刊に、2つの過労死の記事が並んで掲載されました。いずれも、労災認定されています。
・IT企業 専門業務型裁量労働制
・TV局  管理監督者

裁量労働制の場合、1日のみなし労働時間時間を設定すれば、その時間を超えて労働したとしても、その日の労働時間はみなしで設定した時間となります。管理監督者の場合、労働基準法上、時間外勤務手当と休日勤務手当は対象外です。
そんなこともあり、裁量労働制の対象者や管理監督者の労働時間(労働していたであろう時間)を、会社がしっかり把握していないとみころも見受けられます。しかし、労働時間の把握は、割増賃金のためだけではなく、従業員の健康管理のためにも必要なのです。
裁量労働制を導入しているある会社が、対象者が実際は何時間労働していたかを調査しました。すると、ほとんどの人が過労死ラインといわれる月80時間の時間外労働を超えていませんでした。しかし、1名だけ、3か月連続で時間外労働が80時間を超えていたのです。調査結果をみて「ゾッとした」
「うちは、概ね大丈夫」と思っていても、正確に調べてみないとわからないものです。そもそも、裁量労働制の対象者にしても、管理監督者にしても、深夜勤務(22時から翌朝5時まで)の割増賃金は支払う義務があります。従って、労働時間の把握は必ずしなくてはならないのです。

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5月1日が祝日になると、残業代が増える?

ilm08_cf11001今年のゴールデンウイーク、皆さんはいかがお過ごしましたか。私は趣味のサッカー観戦やサイクリングを満喫しました。終わったばかりですが、ここでは来年のゴールデンウイークの話をします。来年の5月1日に新しい天皇陛下が即位され、元号が新しくなることから、この日を祝日にすることが検討されています。5月1日が祝日となると、祝日に挟まれた4月30日と5月2日も休日になることから、来年のゴールデンウイークは10連休になるという話も出ています。(まだ決定していませんが・・・・)
実は、このことによって、残業代が増える可能性があるのです。

月給者の場合、残業代や休日勤務手当、深夜勤務手当といった割増賃金を算出する際、まず、1時間当たりの単価を算出します。その単価の計算式が次のようになります。
(月給)÷(1年間における1か月の平均所定労働時間)
※「月給」の中には含まれる手当と含まれない手当があります
今回注目するのが、(1年間における1か月の平均所定労働時間)の方です。

(1年間における1か月の平均所定労働時間)は、原則として、次の式で求めます。
(1年間の所定勤務日数)×(1日の所定労働時間)÷12

所定休日を
土曜日、日曜日、祝日、年末年始(12月29日から1月4日)
と定めている会社では、(1年間の所定勤務日数)はその年によって違ってきます。うるう年があったり、祝日と土曜日が重なったりするからです。ただ、これを毎年チェックして改定するのは大変です。給与ソフトの設定もその都度変更しなくてはなりません。
そこで、多くの企業が、この単価計算のうえでは、1年間の所定勤務日数を240日に固定しています。1日の所定労働時間が8時間であれば
240×8÷12=160
となり、(月給)を160で割った値を1時間当たりの単価としているのです。
1年間の所定勤務日数を241日の年は、本来の計算で行くと
241×8÷12=160.66
となり、(月給)を160.66で割った値を1時間当たりの単価とするのですが、割る数を160という少ない数値で割れば単価は高くなり、労働者にとって有利になります。よって、1年間の所定勤務日数を241日の年でも、240日として計算しても違法にはなりません。242日の年でも、243日の年でも同じ事が言えます。現在の祝日の数では、1年間の所定勤務日数が240日未満になることはないので、240日で固定して計算しているのです。

ところが、来年の5月1日が祝日になり4月30日と5月2日も休日になるとどうでしょうか。来年2019年のカレンダーをもとに数えてみたら、1年間の所定勤務日数を239日となりました。このまま行くと、239日として計算しなくてはならず、1時間当たりの単価は上がることになります。

1年間の所定勤務日数を数えるにあたり、来年の12月23日も天皇誕生日の祝日としました。来年の12月23日が祝日でなくなれば、1年間の所定勤務日数を240日となります。ただ、会社の創立記念日や夏休みも所定休日と定めていれば、240日未満になることもあり得ます。
また、今回は1月1日から12月31日までを1年としましたが、会社によっては4月1日から3月31日の年度で計算しているところもあります。その場合は別の結果が出てきます。

5月1日が祝日となった場合には、自社の1年間の所定勤務日数や、割増賃金算出の際の計算方法を確認する必要があるでしょう。

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勤務間インターバル制度の活用法

ilm08_cd03010前回のブログで紹介した過労死等防止対策大綱」の改定案。労働時間の把握の厳格化とともに挙げられていたのは、勤務間インターバル制度についてです。導入企業の割合など数値目標を掲げるようです。
前日の終業時刻から当日の始業時刻までの間、一定時間の間隔をあける勤務間インターバル制度は、欧米ではかなり普及しています。しかし日本で導入している企業は、全体の2%にも満たないという調査結果もあります。

当事務所のクライアント企業で、勤務間インターバル制度を導入しない(導入できない)理由を聞いてみると、以下のような答えが返ってきます。
ア 忙しい時期は、夜遅くまで仕事をせざるを得ない。翌日も通常通り出勤しないと、仕事が間に合わない。
イ 始業時刻が遅くなれば、終業時刻も遅くなる。そうやって、どんどん仕事をする時間帯が遅くなり、深夜勤務が常態化してしまう。

アのような状況が続けば長時間労働が慢性化することになり、本来、このような企業こそ勤務間インターバル制度を導入すべきなのです。ただ、仕事量との関係でなかなか導入に踏み切れないのでしょう。このような場合、「一律に〇時間、必ず空ける」と決めてしまうと、なかなかうまくいかないのかもしれません。
・勤務間の間隔は、無理のない程度にする。(例 8時間)
・前日の勤務との間でしっかり間隔が取れなかった場合に、制度を発動する。(2日連続の長時間勤務はダメ)
・始業時刻は遅くするが、終業時刻は通常通り(あるいは、時刻制限を設ける)とする。

勤務間インターバル制度は、働き方改革の法案にも挙げられていますが、当面は努力義務の予定です。法律的な制限はまだかかりません。自社に適した制度を試し、改善し、従業員の健康確保に努めましょう。

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労働時間の把握の厳格化

ilm08_ab07007政府は「過労死等防止対策大綱」の改定案を公表しました。この大綱は2015年に制定されましたが、3年ごとに改定されることになっています。今回が1回目の改定ということになります。

この中で目を引いたのが、労働時間の把握方法です。現在は、大きく分けて次の3つの方法をしめしています。
1 使用者が自ら現認する。
2 タイムカード、ICカード、パソコンの使用記録などの客観的な記録を基にする。
3 労働者の自己申告による。

このうち、3の自己申告制には、
社内の入退場記録と著しい乖離がある場合には実態調査を行う
申告時間の上限を設ける等、適正な自己申告を阻害する措置を設けることを禁止する
などの条件が付けられています。

大綱の改定案では、自己申告制ではなく、原則として1の現認か2のICカード等の機器による客観的な方法で行うよう指導するようになりました。
使用者の現認とは、現場の管理職などが、実際に労働者が仕事に就いた時刻と終了した時刻を確認し、記録する方法です。集団で作業をする現場などでは可能かもしれませんが、多くの人が所属する事務所で、しかも終業時刻がまちまちな場合は、この方法難しいです。したがって、2のICカード等の機器による客観的な時間の把握がよいかもしれません。

業種・業態、会社の規模等により適した方法があるかと思います。それぞれの会社で、適した労働時間の把握方法の構築が望まれます。

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業務委託契約の問題点

ilm08_ab08006最近、特定の企業に属さず、フリーで業務を請け負うプログラマーやデザイナーの方が増えています。これらの方をフリーランスという言葉で呼ぶことがあります。フリーランスの場合、一般的には企業と業務委託契約を締結し、仕事ごとに複数の企業と契約していきます。
ただ、中には、特定の企業と継続的に業務委託契約をし、その企業の従業員と同じように働いている人もいます。

そのような業務委託契約を結んでいる人たちにも理由があります。自由な時間に働きたい、社会保険料を引かれないので手取りが多くなる などです。ただ、それだけの理由で業務委託を選択するのは危険です。

業務委託契約の人は労働者ではありません。労働基準法の適用はあません。長時間労働の規制もなければ、最低賃金の補償もありません。有給休暇もなければ、労災の適用もありません。社会保険は自分で加入し、自分で全額保険料を払います(ご家族の被扶養者であれば別)。会社で社会保険に入れば、その保険料は給与から引かれますが、かかる保険料の半分だけです。所得税の面でも、労働者であれば「給与所得控除」というものがあり、フリーランスよりも有利になることが多いです。

そしてそもそも、業務委託契約かどうかは、会社と個人が合意して決まるものかというと、そうとは限りません。以下のような状況があれば、契約書が「業務委託契約」となっていても、雇用契約とみなされる可能性が高いです。

□個々の業務(仕事)について、する、しないの選択権がない。
□業務のやり方、進め方について、会社からの指示を受けている

□場所の拘束や時間の拘束を受けている。
□報酬が、成果物ではなく時間単位(日単位、月単位も含む)で定められている。

□仕事で使う機材や道具を、会社が提供している。

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企業のいちばんのリスクは人?

ilm08_ac07008企業が重視しているリスクは何か。東京海上日動火災保険さんが昨年行った調査では、「労働・雇用問題」が第1位だったそうです。2年前の4位から大きくアップしました。
第2位は「コンプライアンス違反・ガバナンス問題」、第3位は「情報・システムリスク」。これらも重要な課題であることは間違えありません。しかし、それを押しのけて「労働・雇用問題」が第1位になったのは、最近の世の中の状況を見れば納得できます。

働き方改革が叫ばれる中、長時間労働で過労死 なんてことが起こると、その会社の信用は大きく落ちます。就職を考えていた人は考え直すでしょうし、企業取引の面でも敬遠されるかもしれません。労働や雇用といった人に関することは、これほど重要な経営課題になっているのです。

ところで、みなさんは「リスク」という言葉を聞くとどんなイメージをもちますか?危険、不利になる、損をする。マイナスのイメージが強いことでしょう。しかし、語源を調べてみるとそれだけではないのです。(諸説ありますが・・・)

イタリア語に「勇気をもって試みる」という意味の「risicare」という言葉があります。ほかの言語にも「リスク」の語源と思われる言葉はあります。投資の世界では「変動幅」という意味で使われることがあります。リスクが高いということは、下がる(損をする)時には大きく下がる(損をする)かもしれないが、上がる(儲かる)時も大きく上がる(儲かる)かもしれないことを意味します。マイナスだけでなく、プラスに変動することも含まれるのです。

「労働・雇用問題」で失敗すると、業績も落ちることでしょう。しかし、人に投資をし、成長させ、「労働・雇用問題」で大きな成果を出せば、企業はますます発展していくでしょう。

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働き方改革法案 国会審議へ

ilm08_ac070094月6日、政府は働き方改革の関連法案を閣議決定しました。今国会での成立を目指します。
主な中身は以下の通りです。
1 時間外労働の上限規制
2 同一労働同一賃金の実現
3 高度プロフェッショナル制度(脱時間給)の導入
4 勤務間インターバル制度の導入(努力義務)
5 年次有給休暇の付与義務
6 労働時間の把握の義務付け
なお、最近話題になっていた裁量労働制の拡大については、法案から削除されました。
また、最近はあまり話題になっていなかった、年間5日は年次有給休暇を付与する義務については、しっかり法案に盛り込まれています。

施行日は原則として2019年(来年)4月です。ただ、1についは、中小企業は2020年4月からです。2については大企業が2020年4月から、中小企業が2021年4月からとなっています。

国会の審議があるので、このまま成立するかどうかはわかりません。また、施行時期も延期になるかもしれません。ただ、法律が変更になったことを想定し、今から社内検討は必要でしょう。

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「最近の若い者」はいつの時代にもいた

ilm08_ac07003明日から4月、週明けには新入社員が出社してくるという企業も多いでしょう。

この時期に聞かれるのは、「最近の若い者は、何を考えているのかわからない。」、「どう指導していいかわからない。」というベテラン社員の嘆き。
例えば、「なんでもネットを見て決め、自分で考えようとしない。」というベテラン社員に対して、「早く、正確に答えが出るので効率的」という若手社員。どちらの言い分にも納得できる点はあります。

私が大学を卒業して企業に就職したのは、今からちょうど30年前の昭和63年4月のことです。平成が終わろうとしているこの時代から見ると、かなり昔の話です。
そんな当時、私たち世代についたあだ名は「新人類」。まるで、新種の生物です。当時のベテラン社員から見れば、それほど変わり者だったのでしょう。
その新人類も、30年経った今は、「最近の若い者は・・・・」と言うようになりました。

世の中は絶えず進化しています。人の価値観も変わっています。ベテランと若手だけでなく、ベテラン同志、若手同士の中でもさまざまな価値観があります。
自分とは考え方が違う人もいるということを認識することが大切です。

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人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

29570546_1624294124314100_2816953781264880749_n遅ればせながら、話題の名著を読みました。人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか この「パズル」を解くカギはあるのでしょうか。

この本では、そまぞまな観点から分析をしています。
・非正規社員の増加により、全体の賃金を下げている。
・学卒時、就職氷河期だった世代の賃金の低さが影響している。
・景気が悪くても賃金は下げられない。それがあるから、賃金はなかなか上げられない。

答えは1つではなく、これら要因が重なり、あるいは関連しあっているのでしょう。

さて、この先も人手不足で賃金は上がらない状況が続くのでしょうか。この本を読んで私なりに推測した結果、人手不足は続くものの、賃金は上がっていくと考えました。ただし、そのためには条件があります。

人手不足というのは今後も続いていくと思います。日本の人口は減ってきています。ここ数年、女性や高年齢者の労働市場への参入によりそれを補ってきました。ただ、これらの層の参入が、この先増えていくということは考えにくいです。
そして、こられの層は主に非正規で雇用されていました。非正規労働者の数はこの先は増えないと推測しています。それなら正規雇用が増え、全体の賃金は上がっていくか。

そう簡単な話ではないかと思います。一人当たりの生産性が向上しなければ、賃金は上がらないでしょう。そのためには、労働者への教育訓練が不可欠です。人への投資が利益を生み、それが賃金上昇へつながっていくと思います。

「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」玄田有史編 (2017年 慶応義塾大学出版会)

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賃上げ3%は達成した?

ilm08_aa06002「最近の春闘は、労働組合が要求を出すのではなく、総理大臣が要求を出すのか?」
こんな声すら聞こえてきそうな今年の春闘。安倍首相が「賃上げ3%」とことあるごとに語っていた中、3月14日に大手企業の集中回答日をむかえました。

結果はというと、月給ベースで3%の賃上げを達成した企業、賞与も含めた年収を3%以上上げた企業、いずれも3%に届かなかった企業とさまざまでした。連合が発表した第1回の集計では、平均賃上げ率が2.13%、昨年の第1回集計と比べてわずかに上がっています。

私の率直な感想は「もう少し賃上げがあると思っていなのに・・・・・」です。経済番組などでみた企業トップの年頭のコメントでは、賃上げ3%を公言していたところが半数くらいあったかと思います。ただ、月給ベースで3%の賃上げを達成した企業はそれ以下でしょう。年収ベースで3%あけだ企業を含めれば半数くらいになりますが。

やはり、一度上げた月給(基本給)を下げるのは難しく、それがわかっているからなかなか上げられず、その代わりに賞与を上げたのでしょう。

ただ、今年の春闘では、労働時間の短縮や、非正規労働者の賃上げなども多くあったようです。正社員の賃上げだけが春闘ではありません。

大手企業の賃上げが出そろいました。次は中小企業の賃上げがどうなるかに注目です。

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