103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁
このような年収の壁の表記表現は最近よく聞きます。
103万円は税金の扶養、106万円は社会保険の加入、130万円は健康保険の扶養という事をわかっている人は多いでしょう。
それでは、年収とはいつからいつまでの収入かわかりますか?
「年収だから、1月から12月までに決まっているじゃないか」
そういう意見が聞こえてきそうですが、そうとは限らないのです。
〇税金の扶養と健康保険の扶養
これは最近実際にあった話です。
A社の社員Bさんが、1月の始めに
「うちの妻はもう退職しているので、今年から扶養にして欲しい」
と総務の担当者に言ってきました。
聞けば、退職したのは令和6年6月30日で、7月以降は家事に専念したので無収入でした。
失業給付も、受けていませんでした。
ただ、Aさんの奥さんは令和6年1月から6月までの収入が300万円を超えていました。
Aさんは令和6年中は扶養に入ることができないと思い、年が明けた令和7年1月に扶養に入る事を申出たのです。
たしかに、令和6年のAさんの年末調整では、奥さんを扶養にすることはできません。
令和6年1月から12月までの収入額が、配偶者として扶養になる金額を超えているからです。
ただ、健康保険の扶養に関しては、令和6年7月1日から扶養にできたのです。
健康保険の扶養の場合、「年収」というのは、その時点での1年間当たりの収入の見込み額を指します。
退職して収入の見込みがなければ、その時点で「年収0」と解釈されるのです。
〇言葉の意味をしっかり調べる
時にマスコミは、簡潔で伝わりやすい表現を使用します。
ただ、その過程で前提条件などを省くことがあります。
103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁
多くの人が、これは年収のことで、年収とは1月から12月までと思っているでしょう。
実際には103万円の壁のみが1月から12月の収入の事を指しています。
106万円の壁に至っては、そもそも年収ではなく、月収88,000円なのです。
88,000円を12倍しても106万円にはなりません。
短く簡単な表現もいいですが、意味する正確なことを調べることも大切です。
ただ残念なのは、この違いをしっかり説明する人や説明するメディア、サイトが極端に少ない事です。
平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金