11月2日付日本経済新聞朝刊の記事によると、厚生労働省は、現在一部の業種で認められているフリーランスの労災保険加入について、「原則全業種のフリーランスが加入できるようにする」とあります。
フリーランスが労災保険に加入できるようになるのはよい事ですが、全ての「個人事業主」が加入できるようになるわけではないようです。
〇現在でも労災保険に加入できるフリーランス
企業に属さず、自ら仕事を請け負っている、いわゆるフリーランスと言われる人は、およそ460万人いると言われています。
先日発表された、令和5年9月の就業者数は6787万人でした。働く人の「15人に1人」はフリーランスと言っていいほど、人数は拡大してきています。
建設業の一人親方については、フリーランスという言葉が浸透する前から個人で労災保険に加入できました。
働き方の多様化により、令和に入ったころからフリーランスの労災加入が拡大し、令和5年10月現在では、以下の業種で労災保険に加入できるようになっています。
・ 建設業の一人親方
・ 芸能関係作業従事者
・ アニメーション制作作業従事者
・ 柔道整復師
・ 創業支援等措置に基づき事業を行う方
・ 自転車を使用して貨物運送事業を行う者
・ ITフリーランス
・歯科技工士
・あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師
・介護作業従事者及び家事支援従事者 など
〇加入の仕方は
拡大されるフリーランスの労災加入ですが、加入方法などは、現在と同じようになると予想されます。
まず、加入は任意になるでしょう。 加入したい人が申請することになります。
企業の労働者が加入している労災保険は、強制で自動的に加入なので、そこは違ってきます。
フリーランスの労災保険加入は、各地域にある特別加入団体を通して行うことになっています。
また、保険料は、フリーランスの人本人が全額負担することになるでしょう。
企業の労働者が加入している労災保険の保険料は全額企業が負担しますので、ここも違います。
〇保険料の計算方法
フリーランスの労災保険料は、以下の算式で決まります。
給付基礎日額×労災保険料率×365 (1年間の金額)
給付基礎日額とは、休業した時に1日にもらえる金額の事です。障害が残った際の補償や遺族補償の際にもこの給付基礎日額が使用されます。
最高額25,000円、最低額3,500円の中から、自身で選ぶことができます。
労災保険料率は、従事する仕事の内容によって決められています。
自転車を使用して貨物運送事業を行う人の場合は、12/1000(1.2%)
ITフリーランスの場合は、3/1000(0.3%)
例えば、自転車を使用して貨物運送事業を行う人が、給付基礎日額を3,500円と選んだ時の、年間の労災保険料は
3,500×12÷1000×365=15,330円
となります。給付基礎日額を最低額にしても、1年間にこの金額を自身で負担することになります。
〇そもそも労働者では?
フリーランスの労災保険加入が拡大することは、セーフティーネットが拡大する事なので良い事です。
ただ、形式上はフリーランスであっても、実態は労働者であれば、法律上も労働者になります。
労災保険はその企業で加入することになり、保険料も企業が全額負担になります。
最低賃金法はもちろん適用され、有給休暇をはじめとして労働者としての権利も付与されます。
労働者かどうかは、厚生労働省が出している以下の基準を元に判断します。
・労働者性の判断基準
1・2を総合的に勘案することで、個別具体的に判断する。
1使用従属性
⑴ 指揮監督下の労働であるかどうか
イ 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
ロ 業務遂行上の指揮監督の有無
ハ 拘束性の有無
二 代替性の有無
⑵
2労働者性の判断を補強する要素があるかどうか
⑴ 事業者性の有無
イ 機械、器具の負担関係
ロ 報酬の額
⑵ 専属性の程度
(3) その他
自社で請負や業務委託として契約している人の中で、上記の基準に照らして労働者と判断される人がいたら、その人は労働者として、しっかり雇用する必要があります。
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