4月16日、事業場外みなし労働の適用可否に関する最高裁判決がでました。
一審と二審は、事業場外みなし労働は適用できないとし、労働者の未払い賃金約29万円の支払いを命じました。
しかし最高裁では、適用できない とした判断を破棄。一審、二審の判決を覆した形になります。
〇事業場外みなし労働とは
事業場外、つまり会社外で行われた労働について、その労働時間が算定しがたい 場合に、あらかじめ決められた時間労働したとみなす制度です。
労働基準法第38条の2に定められています。
1日事業場外で労働したら、その会社の所定労働時間(8時間が一般的)したとみなすのが原則です。
労使協定などで、例えば1日9時間 のように所定労働時間と違う時間にすることも可能です。
ただし、事業場外の労働が全て みなし になるわけではありません。
「労働時間が算定しがたい」という条件があります。
例えば、外回りの営業でも、会社から携帯電話やメールで逐一指示が出ていて、その通りに行動しなくてはならないという場合は、事業場外みなし労働ではなくなります。
〇本裁判の争点
この裁判の争点は、「労働時間が算定しがたい」かどうかでした。
原告の労働者は、始業・終業時刻や訪問先などを記した業務日報を事業主に提出していました。
一審と二審は、この業務日報があるので、「労働時間を算定しがたい」とはならず、事業場外みなし労働を否定しました。
ただ、最高裁では、
業務日報のみを重視して「労働時間を算定しがたい」とならず とした判断は違法
としました。労働者が書いた業務日報だけでは判断できないということでしょう。
〇労働時間の自己申告
労働者が書いた業務日報、これは労働者が労働時間を自己申告したと解釈できます。
厚生労働省が出している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」によると、労働時間の把握方法は、原則として次のアかイのどちらかにするように書かれています。
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎 として確認し、適正に記録すること。
そして、上記の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合について、
適切な時間を申告させるよう労働者に説明したり、
申告の時間と実際の時間の乖離を適宜調べて乖離がある場合は補正したり
する措置を実施することを求めています。
今回の最高裁判決から、時間外労働の時間や裁量労働制の時間把握についても、自己申告制の場合は、正確な時間になっているかどうか、しっかりと検証していく必要があると感じました。
平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金 (hirakura.net)
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