内閣府が全職員を対象に開催した、「賃上げを幅広く実現するための政策アイデアコンテスト」
優勝したのは、「労働者に終業時刻後の業務を個人事業主の形式で行わせる」というアイデアでした。
こうすることにより、こうすることにより、社会保険料が削減され、労使ともにメリットがあるという内容でした。
ただ、このアイデアについては、多くの機関から意見や生命が出ています。
〇さまざまな団体の反応
マスコミでは、「脱法行為の可能性がある」と紹介しているところがありました。
SNSでも疑問の声があがっているようです。
日本労働弁護団や連合などが批判の声明を出しています。
〇全国社会保険労務士会の声明
声明では、まず「当該アイデアについては、労働時間及び社会保険料の捉え方に問題があると考える。」としています。
同じ使用者の指揮命令下で業務を行っているのに、定時という一定の時刻を境に「労働者による労働」と「個人事業主による業務」に分けるのは、「労働基準法に定める割増賃金の支払い義務を免れるための行為とみられ、法の趣旨に反するものと考えられる。」としています。
社会保険料についても、「事業主が社会保険料を「コスト」と捉えその負担を免れるため、あるいは労働者がいわゆる手取りの給与額を増やそうとするがため、業務委託契約により、その適用から除外することは、制度の趣旨に反する行為であると考える。」としています。
〇平倉社労士の見解
大いに問題あるアイデアです。理由は、上記の機関の声明や意見とほぼ同じです。
定時(所定終業時刻)とそれ以降で、同じ事業主の指揮の元、同じ仕事をしていいれば、前後を労働者と個人事業主に区分することはできません。
同じ人が同じことをしているのです。連続した労働にかわりありません。
これが認められれば、時間外労働は0です。
割増賃金が支払われないだけでなく、36協定の時間外労働規制も外れ、長時間労働で健康を害するかもしれません。
そして、定時(所定終業時刻)後に働いている時に災害に遭ったら労災は認められるのか?
定時後に個人事業主として働き、その帰り道でケガをしたら通勤災害として認められるか?
という課題もあります。
労災保険法では、労働者としての業務が終了し、長時間、労働と関係ない行為をした後に帰宅した場合は、労働と通勤(仕事後に自宅に戻る行為)の関連性は薄く、通勤災害は認められないことになっています。
もし、このような制度を取り入れたいと相談されたら、「違法行為になる事は確実なので、やめてください。」と制止します。
平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金 (hirakura.net)
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