兵庫県庁の問題で、公益通報保護法がクローズアップされました。
開会中の今国会に、公益通報保護法の改正案が提出され、今国会で成立する可能性があります。
施行は未だ先になりますが、主な改正案の内容を見ていきます。
〇従事者の指定
公益通報保護法では、従業員301人以上の企業に対して、内部公益通報受付窓口において、公益通報対応業務を行う者を従事者を定めるようになっています。
この従事者にはもちろん守秘義務が課されていて、違反した場合は刑事罰もありえます。
ただ、企業が従事者を定めなくても刑事罰はありませんでした。
今回の法改正案では、従事者を定めていない企業に、刑事罰も対象になるようになっています。
実際に従事者を定めていない企業も多く、従業員からみれば、「誰に(どこに)通報してよいかわからない」状況だったので、それを改めるのが趣旨です。
〇フリーランスも対象に
公益通報として保護される人の範囲も定められています。
その会社の従業員(非正規社員も含む)や役員、退職1年以内の人も含まれます。
今回の法改正案では、特定受託業務従事者または特定受託業務従事者、つまりフリーランスの人も対象になります。
〇通報者の探索禁止
公益通報者は、匿名であっても、要件を満たしていれば保護の対象です。
今回の改正案では、公益通報者の探索する行為が禁止になります。
ただ、どんな場合でも禁止になるのではなく、「正当な理由がなく」という文言が入ります。
通報内容の調査の為、どの部署やどのような場所で起こった事かが必要な必要な場合が有ります。
これを通報者に確認することは、禁止される行為ではないとなります。
〇公益通報を妨害する行為の禁止
従業員に対して、公益通報したら不利益を課すような発言をしたり、あるいは、公益通報をしないことの誓約書を書かせたりという妨害行為が禁止になります。
ただ、ここにも、「正当な理由がなく」という文言が入ります。
例えば、通報内容について、会社が法令違反の有無や通報事項の是正を行っている段階で、外部に通報することをやめるよう求めることが考えられます。
〇不利益扱い解雇、懲戒処分の刑事罰
現在の公益通報保護法でも、通報したことに対する不利益扱いは禁止されています。ただし、違反した場合の刑事罰はありません。
今回の法改正案では、解雇と懲戒処分については違反した場合に刑事罰が科されるようになります。
また、例えば解雇をされて会社が刑事罰を受けたとしても、それだけでは本人はなにも救済されません。
救済を求める場合は、民事訴訟を起こし、なおかつ、「通報による不利益な解雇で違法だ」ということを解雇された人が立証しなくてはなりません。
今回の法改正案では、公益通報をしてから1年以内の解雇と懲戒処分については、民事訴訟での立証責任は会社側になります。
平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金
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