年金制度改革法案が今国会で審議されます。
当初は、基礎年金(国民年金)部分の引き上げについては審議されない予定でした。
ただ、与野党協議の上、法案が修正され、審議されることとなりました。
〇短時間労働者の加入要件拡大
基礎年金部分の底上げ以外で中小企業で影響がありそうなのは、社会保険に加入する要件が拡大する条文です。
現在は、被保険者が50人以下の事業所と51人以上の事業所では、社会保険に加入する要件が違います。
50人以下の事業所では、従来からあった、「1カ月の所定労働日数及び1週間の所定労働時間が、正規社員の4分の3以上」です。
概ね、1週間に30時間以上働く契約になっている人が社会保険に加入します。
51人以上の事業所では、次の要件になります。
1週間の所定労働時間が20時間以上
賃金が月額88000円以上(年間106万円ではありません)
勤務期間が2カ月わ超える見込み
学生ではない
50人以下では、1週間おおむね30時間以上勤務だったのが、51人以上では1週間20時間以上勤務になります。
現在51人以上となっている部分を、段階的に拡大していくのが今回の法案です。
2027年10月から 36人以上
2029年10月から 21人以上
2032年10月から 11人以上
2035年10月から 全事業所
また、「賃金が月額88000円以上」の要件は削除することも法案に盛り込まれています。
これが削除されれば、「106万円の壁」などというまぎらわしい言葉が世の中から無くなります。
〇基礎年金底上げが必要な理由
日本の公的年金制度には、国民全員が受給する国民年金と、会社員など厚生年金保険に加入していた人が受給する厚生年金があります。
国民年金にしか加入していなかった人は、老後の年金でも国民年金しかもらえません。
ところが、厚生年金保険にしか加入してこなかった人は、厚生年金も国民年金も両方もらえます。
これまで納めていた厚生年金保険料の中には、国民年金保険料も含まれているのです。
国民年金は全員がもらえるため、基礎年金と言われるのです。
その国民年金の受給額、厚生労働省が試算したところ、2050年代ごろに、現在の水準から3割低下する可能性があることがわかりました。
2050年というのは、就職氷河期世代の人が65歳になり、年金を受給できるようになる頃です。
就職氷河期ということは、厚生年金保険に加入できなかった期間が多く、厚生年金の金額も少なくなります。
国民年金に頼らざるを得ませんが、その国民年金が3割も低下したら困ってしまいます。
そこで、これを補填しようと考え、財源は比較的潤沢な厚生年金の積立金から持ってこようとしました。
ただ、こうすると国民年金の受給額は減らさずに済むかもしれませんが、厚生年金の受給額が減る可能性があります。
それは不公平ではないかということで、基礎年金部分底上げの法案は、一時国会に上程されませんでした。
〇厚生年金の財源を使用するのは不公平か?
上で書いた通り、厚生年金保険に加入していた人は国民年金も受給できます。
自分たちが払っていた厚生年金保険料は、自分たちがもらう国民年金の財源にもなるのです。
たしかに、国民年金だけの人の方がいい思いをするのかもしれません。
ただ、厚生年金の受給者の人も、国民年金が目減りしたら困るのです。
そう考えると、財源を回してもよいのではないかと思います。
さて、国民年金のおよそ半分は消費税で賄われています。
今回の基礎年金底上げ審議と、消費税引き下げの議論がどう関係していくのかがこれからの注目点です。
平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金
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