就業規則に、懲戒処分の1つとして、「減給」を定めている企業は多いです。
この減給処分ですが、国際的な人権基準に照らせば、強制労働にみなされるという可能性があります。
そこでこの減給処分を廃止にする動きが出ています。
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〇就業規則上の減給処分
就業規則には、懲戒処分として、いくつかの種類が定められています。
それは、事案の重さに応じて決められ、一般的には次のようなものになっています。
訓戒
減給
出勤停止
懲戒解雇
上記は、事案の軽い方から並べています。減給は軽い方から二番目というのが一般的です。
どの程度のことをしたら減給処分になるかは、その企業によってばらつきはあります。
一般的では、無断欠勤を1回しただけではならないでしょう。
無断欠勤をしたことに対してた厳重注意、もしくは訓戒の処分をしたのにも係わらず、再度無断欠勤をしたような場合なら、減給処分になるかもしれません。
そして、この減給は、欠勤した分の賃金カットに加えて行うのが一般的です。
つまり、欠勤控除の分を超えて減給することになります。
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〇減給廃止の背景
欠勤控除の分を超えて減給することは、「働いた分の賃金を払わない」ことになります。
これが、国際的人権規範に照らして問題視されています。
ILO(国際労働機関)や、企業の責任ある事業活動を推進する国際的な企業団体であるRBAは、懲戒処分としての賃金控除を禁止しています。
その流れの中で、日本でも、大企業を中心に減給処分を廃止にする企業が増えています。
当事務所のクライアントでも、実際に廃止した企業はあります。
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〇減給処分の廃止は本当に必要か?
会社が懲戒処分を乱発し、減給に減給を重ね、賃金がほとんど無くなってしまう。
こんなったら、大変です。
いくら処分とはいえ、せっかく働いた賃金がほとんど無くなってしまったら、労働者の生活がままなりません。
しかし、日本ではこのような事は起こりません。
労働基準法第91条では、減給額の上限をしっかり定めているのです。
「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」
まず、減給1回の限度額は、平均賃金の1日分の半額が限度です。
賃金が月額30万円の平均賃金額は概ね1万円になります。その半額は5,000円になります。
月収が30万円の人は、1回の減給につき、概ね5,000円が限度となります。
また、仮に会社が減給処分を1カ月に20回も乱発したとしても、「総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」があるので、月収30万円の人の減給は3万円が限度となります。
日本では、労働者の生活を配慮し、減給処分で歯止めをかけているのです。
上記のような理由から、減給処分は残しておいてもよいというのが。現時点での当事務所の見解です。




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